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2012
02.27

裁縫師ミントンの冒険 第1話:気分が良かったから

 キャンプ・ブルーフォグへ行くと、いつもその道の先に思いを馳せる。この向こうにはまだ見たことがない世界があると。でも、ちょっと足を延ばすとそこに は見るからに凶悪なモンスターが地を徘徊していて、わたしなんかでは撫でられただけで即デジョンになること請け合いだった。
「無理だ」
 そう自分に言い聞かせては、いつも逃げるように引き返してきた。そしていつもみんなの話についていけず、冒険者ギルドのすみっこで彼等の冒険譚にこっそりと聞き耳を立てながら、作りもしない服の型紙を描いているのだ。

 今日はウルダハの冒険者ギルドの紹介で受けた裁縫のリーヴ納品で久しぶりにブルーフォグに来ている。わりといい出来のケクスを規定より多い6本も納品して、いつもより多めの報酬を受け取って気分が良かったからかもしれない。
 見上げれば久しぶりに澄んだザナラーンらしい青空が広がっていて、高台にあるこの辺りからはかなり遠くまで見渡せた。きっと、目の前に広がるそんな雄大な風景がわたしにそう思わせたのだろうか。
「ちょっと先を見に行ってみようか」
 ダメだったら引き返せばいい。テレポで帰ればいい。
 もしこの先に進むことが出来たとしたら、わたしは変われるかもしれないのだ!

 遠くに如何にも凶悪そうなダイアマイトやペイストなどのモンスターの姿が見える。ここと、ここと、ここ。冒険者ギルドでもらった地形図を広げ、今モンスターたちがいる場所に印を付けた。地図と実際の風景を見比べて、通れそうな場所を探していく。
 … … これならこの地域を抜けられるんじゃないだろうか。少なくとも、今のモンスターの位置からすれば相当先まで進めるはずだ。確かこの先にはプラント入口の門があって安全だという話を聞いたことがある。少なくともそこまでは進めそうだ。
 前に誰かが「探索は迷ったらダメだ。迷う前に進め」と言っていたのを思い出して、わたしは地形図をカバンに押し込んだ。

 ザナラーンの熱射が久々に身に堪えた。ああ、なんで出てくる時に日焼けクリームを塗ってこなかったんだ。きっと首の後ろ辺りはもう真っ赤だ。ヒリヒリする。
 途中で崖下にいたペイストの発見が遅れた時は肝を冷やした。とにかく全力で走っていて振り向いている余裕はなかったから彼がわたしに気付いて追ってきたかどうかは知らないけれど、ひとまず安全と言われているプラントまでようやくたどり着いて、わたしは水筒の蓋を開けた。
 こんな時チョコボに乗れればどんなに楽だっただろうとも思う。一度レンタルチョコボに乗ったことがあったけれど、わたしはあれをうまく乗りこなせなかった。言うことは聞いてくれないし、お尻は痛くなるし。
 でも、今ここにないものをいくら求めても仕方が無いのだ。
 プラントは今は無人らしい。門も閉まっているし、そもそも中に入れないのにどこから安全という話が出てきたんだと思いつつカバンから地形図を取 り出し、周りを見渡した。ここと、ここと、ここにモンスター。ここから影になっているところは見えないので注意しないと。先に進むにはこの細い谷間を通ら ないといけないけれど、その手前に1匹いるのが厄介ね。その先はもうわたしでも見えない。
 よしっと気合を入れなおして立ち上がり、カバンを背負った。
「美容クリームなんて誰か作れたかしらね」
 ああ、日焼け止めクリームはもう仕方が無い。無事帰ったら入念に髪と肌の手入れをしよう。
 なるべく広く視界が取れる場所を選んで走った。遠くまで見渡す眼なら、サンシーカーは他の誰にも負けない。多分この眼はわたしたち種族が持つ最大の武器だ。夜の視界はムーンに譲るけれど、昼間ならあの遠くに視えるジャッカルなんかに負けるわけがない。
 わたしは彼らの視界の死角を選んで走りぬけ、そして突然― ― ― 景色が変わった。

 雨が降りだした。青く高かった空はどんよりとした鉛色に変わった。乾いた砂と土が延々と続いていた地は鈍色の硬い岩になり、ところどころに見たこともない水晶類のような鉱物が顔を出していた。
 ここが、モードゥナ。
 ラノシアが海と草原、ザナラーンが岩と砂漠、黒衣森が沢と森だとしたら、ここは死の湿原だ。生命の息吹を全く感じさせない、死の大地だ。
 そして遠くに見える、大きな塔。
 あれはどこかの街で旅の絵描きが見せてくれた塔だ。その昔の飛空艇が龍の怒りを買って墜落させられたものだと聞いた。それ以降、モードゥナは死の土地になったのだ、と。
 では両端に見える翼のようなものは、あれは龍の翼だろうか。
「寒い」
 カバンの一番下に押し込めてあるローブを引っ張り出し、袖に腕を通した。
 周りに目を配らせながら東へと進む。以前、モードゥナに行くならまずはキャンプ・ブリトルバークに行けと誰かが誰かに言っていたのを聞いていたことがある。そこで態勢を整えてから先に進めと。
 遠くに見えるモンスターは見たことがない種族ばかりだった。体が大きいのであまり素破しっこくないだろうけれど、まともにやりあってはいくら命 があっても足りない。雨のせいで視界はあまりよくないけれど、それでも割と平坦で広い土地柄なのか、特に問題もなく、遠目にエーテライトの光が見えるとこ ろまでやってきた。

 今日はブリトルバークで一泊することにした。駐在するキャンプの守衛達以外にはほとんど人がいなかったので、設置された焚き火の横に陣取って簡単な夕食を済ませた。
 休憩中のトーマス隊長に話を聞くと、どうやら北モードゥナにレブナンツトールというキャンプがあるらしい。近いのはこのまま北上するルートだけ れども、大型のキャラバンを組んでいかないと相当危険だという。おすすめは大きく迂回する西ルートだそうだ。大型モンスターのオー ガが生息する地域だけれども、北ルートよりも魔物が少ないし、最近チラホラ見え隠れするガレマール帝国兵もほとんどいないとのこと。レブナンツ トールへ向かう冒険者を引き止めるのはもう無駄と判っているから、せめて少しでも安全な西のルートで進めと、通りかかる冒険者に忠告しているということ だった。
 マップを持っていないことを告げると、余り物のマップを放り投げてくれた。モードゥナ地域全体の地形図で、魔物の生息域などがざっと書いてあっ た。なるほど、北ルートは細い渓谷にイービルアイとかいるのね。そんなところを通るなんて絶対無理。聞いておいて良かった。明日は素直に西のルートで進む ことにしよう。

 次の日の朝、わたしはお礼を言ってキャンプを後にした。もうこうなったら進めるところまで進もう。行けるところまで行って、もう駄目だと自分が納得出来たらテレポで帰ろう。
 普段ほとんど街から出ないわたしがそんな大冒険をしてきたと知ったら、きっとみんな驚くだろう。裁縫と革細工のことしか知らないわたしだって、立派な冒険者として話に華を咲かせることが出来るんだ。


第2話:高原の国 へつづく。


タグ [裁縫師ミントンの冒険]




Lodestoneコメント

大冒険(*´∀`*)面白かったー♪
続きを楽しみにしてますw
Lico Rice (Aegis)2012年02月28日 00:13
裁縫師の冒険、ミントンさんらしい見方と描かれ方がとても新鮮で面白かったです! 続き楽しみにしてますー(´∀`)
Nao Swing (Aegis)2012年02月28日 00:28
すごく面白いです。続きが楽しみ!
Rutile Fourleaf (Aegis)2012年02月28日 00:32
これもある意味、吟遊詩人・・・・・・・。のちの世に、歌として語り継がれていくのですね
Ferishia Garnet (Aegis)2012年02月28日 00:36
面白かったです^^続き楽しみーーー!
Mirr Fourleaf (Aegis)2012年02月28日 00:42
大冒険!面白かったです♪
続きも楽しみにしています(≧▽≦)
Cocoa Sabure (Aegis)2012年02月28日 01:22
いいすねーw面白かったです
次も楽しみにしてます~(^^♪
Ham Croma (Aegis)2012年02月28日 01:34
すごく自分の心情や背景の描写がうまくて、わたしの頭の中で想像しやすく、いい文章だと思いました。
久しぶりに一気に読んでしまいました。

2話目も楽しみにしていますね^^
Eve Farrow (Aegis)2012年02月28日 01:51
がんばれミントンさんo(`ω´*)o
Raila Raina (Aegis)2012年02月28日 03:58
裁縫師の大冒険!
冒険のドキドキ感が伝わってきて、すごく面白かった!
続き楽しみにしてますー!
Chinju Daichi (Aegis)2012年02月28日 04:40
あれ、また日焼け止め塗り忘れたのか?wと思ったら加筆修正版だったんだね~
あ、今夜は多分イン出来ると思います
Aruhya Popo (Aegis)2012年02月28日 05:17
超大作すごい(゚д゚)!
プラントへ向かって全力で走ってる途中の、振り返る余裕のない場面が
脳裏によみがえりましたΣ(´∀`;)
のどがカラカラでしたよ、うんうんw
Rubinia Acacia (Aegis)2012年02月28日 08:34
冒険譚の序章だ~! 続きが楽しみ♪
戦闘職でもギャザラーでもなくて、裁縫師ってとこがまたイイ!(*´∀`)b
Seto Iuba (Aegis)2012年02月28日 09:31
コメント・いいねを押していただいた皆様、ありがとうございます。
ホントは2次創作の練習のつもりだったのですが、何故か結構長く…
このお話は完成していますが、投稿の5000字制限を考えて何話かに分割しました。1話分で400字詰め原稿用紙だいたい10~12枚前後の長さだったかと思います。
もうアップロードするだけですので、勿体ぶって1日1話づつ公開しようと思います。
日記更新ネタが稼げたゾw


>リコさん 
感想ありがとうございます~。続きは今夜!

>なおさん 
感想ありがとうございます~。裁縫師も冒険者なんだという発想から話を組みました。
続きもお待ちくださいませ~

>Rutileさん 
ゴメンナサイ名前の読み方がワカラナイorz
感想ありがとうございます~。特に問題がなければここ数日の間は毎日1話づつ公開していきますので、よろしければお付き合いくださいませ~

>ふぇりしあさん 
歌として語り継がれるほどの大作じゃないですようw
でも、全部書き上げるのに2ヶ月くらいかかったw

>みるさん 
感想ありがとうございます~。続きは今夜ですのでお待ちくださいね~

>ココアさん 
感想ありがとうございます~。元ネタがあるお話(2次創作)って実はほとんど書かないので、ゲームをやってない人が読むとワケが判らないのじゃないかなあとちょっと反省中ですw

Minton Royaldoulton (Aegis)2012年02月28日 11:09
>ハムさん 
感想ありがとうございます~。日記連載型のお話としてはそれなりの長さがありますので、じっくりお付き合いいただけると嬉しいです。

>イヴさん 
感想ありがとうございます~。まだまだ風景描写が出来てないなというのが自身の評価ですので、精進したいと思いますw

>ライラさん 
がんばりますo(*´ω`)o

>ダイチさん 
感想ありがとうございます~。臨場感はちょっと意識してみましたが、うまく伝わってくれたようでヨカッタw

>あるひゃん 
日焼け止めクリームのシチュは消しちゃダメだと自分で思ってたので、初回版と同じく塗り忘れですw
今度インした時にお願いしますw

>るびにあさん 
感想ありがとうございます~。中途半端な長さになってしまいまして(;´Д`)
あのプラントに走るシーンは、ゲーム内で実体験ですw

>セトさん 
感想ありがとうございます~。裁縫師はやっぱりわたしのメインですから、それで冒険させようかと思ったのがこのお話を書こうと思ったキッカケですかね~

Minton Royaldoulton (Aegis)2012年02月28日 11:10
おくばせながら、今日一話見ました~(o^∇^o)ノ

街にいたミントンさんが外に出て、不安だけどワクワクしてもいる心情がよく伝わってきますね♪
じっくり読みたいので2話は、また明日みますね^^
Fii Karmaikel (Aegis)2012年02月29日 21:22
>ふぃーさん 
感想ありがとうございます~。本当はあちこち行きたいのだけど、強そうなmobとかがいると萎えてしまうのはお話しの中だけじゃなかったりしますw
でも、本当は特攻死デジョン大好きなのですw
Minton Royaldoulton (Aegis)2012年02月29日 21:48

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コメント
衣装が一新されてて笑ったwww
今度こそ完結まで行けるのか!
アルヒャdot 2012.02.28 07:25 | 編集
>あるひゃん 去年は何も考えずにルート開拓だけしてたからねw
でも、このあとローブも着こむし、ベレーも去年のだし、
靴が違うのと、ハチェット背負ってないくらいかしら。
武器は見えないように消してるんだけどね(一応幻術で動いてました)
Mintondot 2012.02.28 16:49 | 編集
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