--
--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2012
02.29

裁縫師ミントンの冒険 第2話:高原の国

【前のお話】
第1話:気分が良かったから


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 目の前に広がる絶景に、どれだけの時間見惚れていただろう。
 炎のオーガの目視を避けて岩山を登ったところに深い谷間が開けていた。高さがどれくらいあるのかよく判らない。見下ろせば、風に乗って雲が流れていた。そしてその下には雄大な草原が広がっているように思える。鮮やかな緑の大地が広がっていた。
 どこの国だろうか。行ってみたい感情がふつふつと湧いてきたけれど、この崖を降りるルートがなさそうだった。
 そんな景色を他にも探しつつ、気が付けば目的のレブナンツトールに到着していた。
 意外とあっけないな、というのが正直な感想だった。ただ運が良かっただけなのかもしれない。今まであれだけ足が進まなかったブルーフォグから出発して、ここまで来るのに一度もモンスターに絡まれなかった。もちろん細心の注意を払ってはいたし、物陰に隠れてモンスターの動きをやり過ごしたりはしたけれど、結局何かに行く手を阻まれることはなかったのはラッキーだったとしか言いようがない。
 キャンプでは歓迎された。しがない裁縫師でしかないわたしがこんなところまでやってきたと知って、素っ頓狂な声を上げた冒険者もいた。
 なぜこんなところまでやってきたか。報酬を多く貰って気分が良かったから冒険しようと思った、それには間違いない。
 でも、広く大きな世界をもっと体験してみたいという冒険者の魂が、わたしの心の奥の何処かにあったからだと、そんなだいそれたことをちょっぴり思った。

 その日はこのキャンプで夜を明かす事にした。
 キャンプ受付のファファナと、淹れたお茶をすすりながらモードゥナのことを話していた時だった。
「ここまで来たってことはクルザスへ行くんでしょ? 行き先はイシュガルド? アウルネスト? それともリバーズミートまで行くの?」
 ここまで来ることを考えていなかったわたしがその先のことを考えているはずもなく。
「イシュガルドっていうところは聞いたことがあるわ。ハルオーネ様の国よね」
 イシュガルドはウルダハの冒険者ギルドで誰かが誰かにしていた話に出てきた国の名だ。十二神のひとりハルオーネ様を崇める戦の国だと言っていた。強い者のみがその地に足を踏み入れることが出来る、完全実力主義の国だと。あくまでも又聞きだったからどこにあるかなんて知らなかったし、わたしは狩りや戦闘をほとんどしないので、そういう話に全く興味がなかった。
 ギルドで募集している裁縫リーヴの納品先はウルダハが治めるザナラーン内にあったし、たまに足を延ばして他国に行ったとしても、それほど遠くない隣国グリダニアかキャンプ・ホライゾンの先から船で行けるリムサ・ロミンサだけ。それだけで充分生計は立てられたし、必要なものもちょっとしたぜいたく品もだいたい手に入った。
 それに、出身のサンシーカーの村では皆アーゼマ様を崇めていたし、わたしが裁縫師としてウルダハでも特に困らずにやれているのは、きっとニメーヤ様の御加護があるからだと思うけれど、近隣で護身程度にはなる、せいぜいレベル20前後の幻術しか知らないわたしにハルオー ネ様が目を向けてくれるとは思えなかった。
 地理に関することだって、それこそキャンプ間の移動中にいるモンスターのテリトリーのことくらいしか知らない。一時期ドライボーンとホライズンの手前にいたあの忌々しいアントが実際どこからやってきていたのか、そのくらいは興味があったけれど、自分に関係のない他の国のことなんて正直全く興味がなかった。
「ここにウルダハから来る人のほとんどがイシュガルド城へ向かうから、てっきりあなたもそうだと思ってた。モードゥナ観光だなんて聞いたことがないしね」
 ララフェル特有のオーバーな身振りでファファナは笑う。この身なりで死の国モードゥナに構えるキャンプの常駐隊員なんだから世の中わけが判らない。ウルダハに行けば同じくらい可愛いララフェルがルビーロード前の広場で楽しそうにキャアキャアはしゃいでいるというのに。
「クルザスはもうすぐそこよ。この裏山を迂回した先の谷を通ればクルザス南に入れるわ。ただ、そこまでの間に湿原の迷霧が西からの風に乗ってくるから、自分の向かっている方向はしっかりと確認しながら進んだほうがいいわね」
 ファファナはそう言いながら地形図に印をつけてわたしに向かって放り投げた。
「久々にウルダハの美味しいお茶を頂いたわ。ごちそうさま。そのクルザスのマップは御礼よ。役に立つと思うわ」
 彼女はそう言って自分の持ち場に戻っていった。
 わたしはもうイシュガルドへ向かうことになっているらしい。まあせっかくだし、行くだけ行ってみようかと、お茶の道具を片付けて、シュラフに体を潜りこませた。

 次の日の早朝にレブナンツトールを出発した。見送ってくれたファファナは迷霧に気をつけてと何度も言ってくれた。あれで方向感覚を失って魔物の餌食になったものは少なくないそうだ。
 確かに、少し進むと湿原からの迷霧が風に乗ってやってきていた。ちょっと濃くなるとすぐに辺りの見通しが悪くなるのと、さらには方向感覚が乱れやすくなるという成分が含まれているのだろうか、アクティブモンスターが多いこのあたりでは確かに厄介な自然現象だと思う。ただ、霧は濃いけれど太陽の方角から今向いている方向は簡単に割り出せた。東にある程度進むと北に谷がある。その谷を通り抜けるとクルザスらしい。
 わたしは周りを注意深く見渡しながら、その谷へ足を踏み入れた。
 さあ、行ってみようか。この鈍色の大地の向こうに、どんな国があるのかを見に。

 谷を抜けると、そこには針葉樹立ち並ぶ高原だった。なんとなく見たことのあるような、懐かしい景色だ。そう、ここはラノシアに似ている。海はないけれど、シダーウッドからブラッドショアに向かうあたりの景色に似た雰囲気を持っていた。
 空は高いけれど、雲が低い。空気は澄んではいるけれど薄くて冷たい。相当な高地に来たなと思った。
 クルザスは高原の国だろうか。
 とにかくもっと広く開けたところを見たい、そう思って足を早めた。
 ところどころにいる青い鹿は、わたしを警戒しているのだろうが、襲っては来ない。あの鹿は一度だけ黒衣森の奥深くで見たことがある。毛並みの青は芸術品だと思った。シルフの話だと、毛皮目的に乱獲された時期があって、わたし達人型の生物に対しては相当に警戒心が高くなったという話だ。でも、こちらから何もしなければ特に危険な目に遭うことはなさそうだった。そう考えればモードゥナよりは安全な国なのかもしれない。
 草むら向こうに見える湿地から低く唸るような鳴き声がした。とっさに身を隠し、聞き耳を立てる。今のは間違いなくトードの鳴き声だ。ずいぶん前に襲われて命からがら逃げ出したことがある。あれは西ラノシアだっただろうか。
 ゆっくりと身を上げて周りを見渡すと、やはりすぐそこの湿地にトードがいた。見たことがない色をしたトードだったけれど、明らかに危険な感じがした。こんなのもいるのね。気を付けないと。
 ようやく目の前に見通しのいい風景が広がった。モンスターがいないところを選んで北へ向かう。ファファナからもらったマップには、この先にキャンプ・エバーレイクスがあるはずだ。しかし目の前に広がるのは、延々と登る丘陵地帯。ずいぶんと高く登ってきたつもりだったけれど、まだ上に行くのか。どんな国なんだイシュガルドは、と思ったその時だった。
 目の前に、聞いたことがない言葉を話す種族が現れた。わたしに向かって手を振り、何かを話している。大きなマスク、もっと大きな背負子を背負い、意味の判らない何かを早口(なのだろうか)で喋っていた。
 なんだろう。襲っては来ないので敵意はないと思うけれど。
 わたしもあなたに対して何かするつもりはありませんという意思表示で両手を上に上げる。彼はそれを見てまた何かを言っているが、さっぱり判らなかった。
「ごめんなさい、わたしにはあなたの言葉が判らないわ」
 わたしが申し訳ないように首を横に振ると、彼は笑うような短い言葉を発し、また手を振って去っていった。
 クルザスの住民なのかなあ? そうすると、この先のキャンプとかお城とかでもあの言葉が判らないとやっていけないのだろうか。

 クルザスをひと言で表すとすると、湖と山岳地帯だと思う。尖った山が連なる風景が印象的だった。山を超えると、その先にもっと高い山が見える。その向こうにはさらに高い山がある。見下ろせば草原と湖があり、ところどころに切った木を貯めておく林業所の建物があった。人の気配はあまりしない。さっきのマスクマンは背中の背負子から考えればこのあたりの住人とは考えづらい。どちらかと言えば旅の行商だ。もしかしたらわたしになにか買って欲しかったのかな?
 陽がそろそろ落ちようかという頃、ようやくキャンプ・エバーレイクスに辿り着いた。よかった、キャンプの隊長格ジャッキヤはわたしと同じミコッテだから、さっきのあのマスクマンみたいに判らない言葉を発することはなさそうだ。
「ああ、それはゴブリンですわね。どこかに行ってた集団が、宗教的な理由で最近帰ってきたって聞きましたわ」
 そんな話初めて聞いた。少なくともウルダハにはいない人たちだけど、もしかしたら将来はあの言葉を判らないと商売にならない時が来るのかもしれない… そんなことはないか。
 キャンプの人たちはわたしを歓迎してくれた。良質な木材を求めて伐採師とその警護をする戦士はよく来るらしいけれど、わたしのようなクラフトを生業としている者がここにやってくるのは、稀に木工師が来る程度で、本当に珍しいそうだ。
 キャンプの兵士たちが身につけている装備品のうち、布革製品ならば手持ちのダークマターで充分修理が出来そうだったので、それをする条件に今日はここで泊めてもらうことにした。

 夜、焚き火を囲んでマルドティーを皆に振る舞いつつ、クルザスの情報を色々と聞いた。この先、北にはキャンプ・ドラゴンヘッド、東に行くとキャンプ・グローリーがあり、その先にはアウルネストという小さなハムレットがあるということ。また、 ドラゴンヘッドから西に行くとイシュガルド城があるけれど、たぶん今のわたしでは門前払いだろうということ。そしてそこからさらに西に行くとキャンプ・リバーズミートがあって、漁師を極めたい人にとっての天国のような沢があるのと、珍しい黒フリースもその辺りが産地だということ。また、別のルートで東に行くとグリダニアが治める黒衣森と繋がっているということで、意外なところで接点があるなあと思った。
 アクティブモンスターも増えてくるけれど、種類は多くないし、高低差はあっても見通せないところを通らなくても先には進めるらしいので、ここまで来れる実力があるならばこの先に進むのもそれほど難しくはないだろう、というのがフィルミアン隊長の話だった。

 明日はもう少し先に進んでみようと思う。ここへ来て散々聞いた「イシュガルド」はどれだけ高慢ちきな人が治める場所なのかこの目で見てみたい気もするし、釣り天国という話のリバーズミートにも行ってみたい気がする。黒衣森へ続くルートを知っておけば将来なにかの役に立つかもしれない。
 どこまで行けるかは判らないけれど、今回の冒険が俄然楽しくなってきた。そんな風に思えるようになったのも、このクルザスの良さなのかもしれない。


第3話:クルザスの亜麻 へつづく。


タグ [裁縫師ミントンの冒険]




Lodestoneコメント

読ませていただきましたー 楽しかった(^^♪
今度マルドティーを自分にもご馳走してくださいw
いくつか選択肢が出てきてまた次が楽しみヽ(*´∀`)ノ
どこにいくのかなぁ?w次も待ってますー
Ham Croma (Aegis)2012年02月29日 00:30
なんだか、FF11始めたての頃に一人でものっそい緊張しながら
バストゥークからサンドリアに徒歩で向かった時の事を思い出しましたw
キッカケは「サンド~バスへ歩いてきた人を見たから」
当時の自分にとっては大冒険でした・・・いやぁなつかしいもう10年m(ゲフゲ
そんな情景が目に浮かんだミントンさんの小説すごい!w
Raila Raina (Aegis)2012年02月29日 05:52
僕もまだグリから出たことがなかったときに、遠出をしてみようとクルザスに迷い込んだ時のことを思い出しましたw あの時はロドストもネットも全く使ってなくて、クルザスの景色だけで「ふぉぉっ!?」っておもったなぁw
すごく懐かしくては引き込まれました、面白かったです!
Nao Swing (Aegis)2012年02月29日 07:11
ハムさんそれ死亡フラグや・・(゚ ゚ )
続きがいろんな意味で楽しみなのだ!
Aruhya Popo (Aegis)2012年02月29日 07:19
すごく読み応えがありました。クルザスもゆったりあるけばこんな雰囲気なんだなぁと。いつも敵こわくて、かけぬけてるから景色ながめる余裕なしのBeniでした><
Beni Camellia (Aegis)2012年02月29日 08:31
いつも誰かについて走り抜ける場所だから、文章で読むと凄くいい♪
「そうそう!」って納得できちゃうし(*´∀`*)
素敵な冒険譚ですの♪
Lico Rice (Aegis)2012年02月29日 11:06
ごめんなさい、上手い言葉が浮かばず、月並みの事しかかけませんが、
まさに冒険!って感じでいいですね~。
みんとんさんの豊かな感性でよく表現されたエオルゼアは
私が見知ったエオルゼアよりも遥かに彩りに満ちていてうらやましい限り。
続き、楽しみにしています!
Taho Yaki (Aegis)2012年02月29日 12:36
すごく引き込まれるお話で、続きが楽しみです(o^-^o)
Lir Akane (Aegis)2012年02月29日 12:46
>ハムさん 
感想ありがとうございます。ほう、マルドティ淹れましょうか。一部でマル毒ティとか言われてますがきっとそんなことはないと思いますよ。
続きのお話は今夜公開です。

>ライラさん 
感想ありがとう~。クルザスに入ったあたりからは、見晴らしも良くなりますし、冒険している感が出てきますよね~。そのワクワクする気持ちを書いてみましたが、うーむ、うまく表現できていたかどうか^^;

>なおさん 
感想ありがとう~。うんうん、クルザスに入った瞬間のあの高揚感わかりますわかりますwwwわたしも「おおおおおおーーー」ってなりましたw

>あるひゃん 
死亡フラグってどういう意味だwww
この先の話を唯一知っているのがアナタですが、でもだいぶ加筆修正したので、改めてお付き合いくださいw

>紅さん 
感想ありがとう~。クルザスもゆっくり歩けば見どころいっぱいなんですよね~。何気にゴブリンもイッパイいるしw とにかく風景の雄大さ、今回はそれを描きたかったのですが、どうでしょうか…

>リコさん
感想ありがとう~。大丈夫、わたしもこのクルザスに初めて行った(このお話の行程はノンフィクションです)時、戦闘レベル20台でしたから、mobに絡まれなければ楽しめます。
クルザスは見晴らしがいいので、風景写真を撮るのにいい環境なんですよね~

>たほ作さん 
感想ありがとう~。いやいや、コメントやいいねという反応があるだけでもすごく嬉しいですから。おそらくきっともっと寝かせれば作中の表現力は上がっていくと思うのですが、流石に公開をコレ以上我慢出来なかったw

>りるさん 
感想ありがとう~。きっと同じ世界で冒険者をやっているからこそ、感じていただけたのかなあと思っています。続きは今晩公開予定です。
Minton Royaldoulton (Aegis)2012年02月29日 14:22
読んでると情景が浮かびます。
裁縫師のミントンさんはどこまで旅をするのかな…
キャラにリュックを装備させたくなりますねw
Rutile Fourleaf (Aegis)2012年02月29日 14:30
漁師天国の沢まで出て来るとは!よく情報を集めてますねw
南からクルザス・ドラゴンヘッド方面に侵入すると、非戦闘職ではスリルとサスペンスの連続で楽しめますよね
Rubinia Acacia (Aegis)2012年02月29日 20:06
本当に情景が浮かんでくるねー。
オイラも11の時、少ないお金で買った地図を片手に、知らない道を、見たこともない場所を、レベル1で必死で走って始めてジュノに到着した時の事を思い出しましたw
ゴブやらいきなり目の前に現れたトレントに殺されたりして、何度もウィンダスに戻ったりしたなぁとw
最近忘れてた、あの時のドキドキな冒険を思い出しましたw
Chinju Daichi (Aegis)2012年02月29日 20:35
情景の描写がすごく上手ですね♪
クルザスやモードゥナは始めた頃レベルもほとんど上げていないのに
珍しい景色を見たくて歩きまわったのですごく懐かしい気分に
なりました。
次回も楽しみにしています!(≧▽≦)
Cocoa Sabure (Aegis)2012年02月29日 21:31
>るてぃるさん 
で、いいのかな、名前の読み方。感想ありがとう~。
戦闘職での冒険じゃないところがミソですw リュック欲しいですよね~。

>るびにあさん 
南側からクルザスに入ると、もう初っ端から無理ゲー感漂ってますよねw
ホントにレベル20くらいの頃にそのルート開拓したんですが、よく行けたものだと我ながら感心しますw

>ダイチさん 
感想ありがとう~。FF14もマップがアレだとか意外と狭いとか色々言われてますが、それでもクルザスは冒険している感があると思うのですよね~。

>ココアさん 
感想ありがとう~。そうそう、クルザスとかモードゥナは最初から気軽に行ける場所じゃなかったので、ちょっとドキドキしながらムリヤリ歩き回りますよね~。
あのドキドキをいつでも感じていたいと思うのですがw

Minton Royaldoulton (Aegis)2012年02月29日 21:55
クルザスは街がないので、独特な雰囲気しますよね~。私もはじめて訪れた際は今まで見たことのない敵と、アクティブなモンスターがいっぱいでビクビク歩いていたのを思い出します。
Fii Karmaikel (Aegis)2012年03月01日 18:05
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。